出品作家の村上さんは、《移住を生活する》のほかに4点の映像作品も出品予定です。
そのうちの一つ《Watch and Forget》の制作を、熊本城二の丸芝生広場で行いました。
当日は青空が広がる快晴。熊本城周辺は、全日本中学校陸上競技選手権大会を控え、全国から来熊している選手や家族、外国人観光客などで賑わっていました。



《Watch and Forget》はこれまでにも世界の様々な場所で制作されているシリーズ。その場所にある建物などをホワイトボードに描き、描き終えたら真っ白に消すというプロセスを、コマ撮り撮影して編集した映像作品です。映像にはドローイング以外の物や音声も混ざり込み、村上さんが集中して描いている一方、周辺には様々な小さな出来事が起きては流れていく様子が伝わります。
今回は約90 x 190 cmの大きなホワイトボードに、熊本城二の丸芝生広場にある楠を描くことに。





写真を撮る観光客が行き交う中、村上さんはひたすら楠を自分の目で見て、手を動かしてなぞり、描いていきます。単体の建築物よりも自然の方が、動きもあり、非対称で、固有のものとして認識しにくく、安易にイメージとして定着しにくいように思えます。もしかすると《Watch and Forget》は、村上さんの体を通り抜けていくパフォーマンス作品とも言えるかもしれません。



炎天下、楠を5時間見続けて描き上げられたドローイングは、最終的にホワイトボードイレーザーのわずか数往復で真っ白に消されました。制作終了後に通りすがりの人から投げかけられた、「ええもん見させてもらいました!」という挨拶は、村上さんが楠を見続けたように、描き続けた村上さんを見た人の言葉に思えました。



村上慧《Watch and Forget》2017

GIII vol. 118 「風を待たずに――村上慧、牛嶋均、坂口恭平の実践」
会期:2017年 8月30日(水)–11月12日(日)
会場:熊本市現代美術館 ギャラリーIII+井手宣通記念ギャラリー

| G3/井手記念室 | 06:29 PM | comments (x) | trackback (x) |