小谷元彦は、東京藝術大学で伝統的な彫刻を学び、その後、写真、映像など積極的に多様なメディアを取り入れ、痛み、恐れ、歓びなど観る者の身体感覚と潜在意識に訴えかける作品を展開してきました。2003年にはヴェネツィア・ビエンナーレ日本館代表の一人に選ばれるなど、国内外の数多くの展覧会に参加し、従来の彫刻の常識を覆す造形表現と美意識は、高い評価を得ています。
この展覧会は、小谷の活動を九州で初めて本格的に紹介するもので、初期の代表作から、最新作となる大型の映像インスタレーションまでを一堂に展示します。タイトルの「幽体の知覚」は、目に見えないもの、実体のない存在や現象、いわば「幽体」(ファントム)を作品によって視覚化させ、知覚しようとする試みを示しています。
本展は、昨年11月の森美術館を皮切りに1年かけて巡回してきました。最終会場となる当館では、新たな出品作品も加え、展示空間にあわせて大幅に再構成いたします。彫刻の概念を拡張するにとどまらず、美術そのものの新たな魅力と可能性を提起する小谷の作品表現をどうぞお楽しみ下さい。
小谷元彦(おだに・もとひこ)
1972年、京都府生まれ。1997年東京藝術大学大学院美術研究科修了。ヴェネツィア・ビエンナーレ日本館(2003年)を始め、リヨンビエンナーレ(2000年)、イスタンブール・ビエンナーレ(2001年)など数多くの国際展に出品。主な個展に、「モディフィケーション」(キリンプラザ大阪、2004年)、「小谷元彦/Hollow」(メゾンエルメス8階フォーラム、2009-10年)、主なグループ展には、「日本ゼロ年」(水戸芸術館現代美術ギャラリー、1999)、「現代美術の皮膚」(国立国際美術館、2007年)、「バイバイキティー:現代日本アートの天地の間」(ジャパン・ソサエティー・ギャラリー、ニューヨーク、2011年)などがある。2011年、第25回平櫛田中賞受賞。 |