平成29年度 文化庁「地域の核となる美術館・歴史博物館支援事業」の一環として、九州産業大学主催の学芸員技術研修会が当館で行われ、美術館・歴史博物館・水族館のスタッフが九州各地から一堂に会しました。
この日のテーマは「誰もが楽しめるユニバーサル・ミュージアム」。
講師は国立民族学博物館の広瀬浩二郎先生です。先生は文化人類学のご専門で、民博着任後は「さわる展示」の開発と普及に取り組まれています。

午前中は広瀬先生から「ユニバーサル・ミュージアム」についてのレクチャーがありました。
ユニバーサル・ミュージアムをつくる理由や理念を説明していただきましたが、その中でも特に、視覚優位になりがちな博物館の展示の現状や、広瀬先生がさわる展示の普及を通して社会に何を訴えかけたいのかというようなお話には、参加者のみなさんも熱心に聞き入っていらっしゃいました。

午後は4〜5人のグループに分かれて、いよいよさわる作品鑑賞のスタートです。



アイマスクをつけて視界を遮ると、自分がどこを歩いているかも、はたして他の人と同じように行動できているかもわかりません。それだけでも、普段からどれほど視覚に頼って生活しているのかということを痛感させられます。この状態で展示室に移動するだけで大変でしたが、アテンドしてくれる人の温もりや、近くにいる人の気配を感じるだけでホッとする感覚はとても新鮮なものでした。

展示室内では抽象と具象の作品2点をさわって味わいました。



手のひらから伝わってくる作品の温度や凹凸を丁寧に感じ取っていくと、まるで作品に自分が溶け込んでいくような一体感を覚えます。
この感覚を忘れないうちに、グループのメンバーと感想をシェアするのもさわる鑑賞の大事なポイント。ほかの人との対話によって、さらに作品そのものへの興味が深まります。

美術鑑賞とはかくあるべき、という固定観念を大きく覆されることになった今回の研修会。
今日の学びをそれぞれの館で生かすことで、ここ九州から博物館全体をより盛り上げていきたいですね。

| G3/井手記念室 | 10:00 AM | comments (x) | trackback (x) |