誉のくまもと展関連イベントとして、出品作家である画家・版画家の秀島由己男さんによるアーティストトーク「『春の城』挿絵を語る」を開催しました。

「春の城」シリーズは、石牟礼道子さんの新聞小説「春の城」の挿絵として制作された約310点の作品群です。ひとつひとつのクオリティにこだわったという作家の言葉の通り、新聞小説の挿絵としては他に例を見ないことですが、作品群から6シリーズの版画セットが発行されています。
本展では、、《春の城−扉》とともに、日本美術競売衄任痢嵜仰の告白」「献身」「殉教」「死と復活」(すべて作家蔵)を展示替えを行いながら、全点展示いたしました。

今回は、制作秘話として、《春の城−扉》が、石牟礼さんと一緒に事前取材に行った時の夕方の海の景色をもとにしていること、天草に行った印象や船の質感を大切にしたことなどたくさんのことを初めてお話いただきました。

また、登場人物の描写についても、リアリティの追求として、友人や知人をモデルとしたこと。作品の表現については、心のなかに長く温めていたイメージは作品として上質なものとなったなど、制作姿勢についてもお話いただきました。

作品には、殉教などの残酷なシーンもあるため、作家として、死だけを表現するのは可哀想なので、美しさを心がけ、幻想的な風景を背景に、などとの人間味あふれる発言もありました。

実物の作品を前に、作家の表現の創意をお聞きする、大変貴重な機会となりました。

| 誉のくまもと展 | 05:09 PM | comments (x) | trackback (x) |

開館15周年 誉のくまもと展、関連イベントとして、現代美術家の鈴木淳さんによるアートイベント「「似木絵」どうです?、ふたたびたび」を開催しました。
当館では、2008年、2013年に続き、3回目の開催です。

今回は、これまでと全く反応が異なり、開始前に行列が出来、急きょ整理番号制とさせていただき、24名の方にご参加いただきました。

ひとりひとりと、じっくりとお話をしながら、その人の雰囲気から得たイメージを木の絵にするアートイベントですが、「現代美術家と会話をしてみよう、絵を描いてもらおう」ということに対して、これまでになく参加者のみなさんが興味を持ち、積極的に働きかける姿勢を感じました。
作家としても「これまでと違う。新しい時代が来ているようです」と驚いた様子でした。

参加された方も、「名前に木の字がありまして」「樹木関係の仕事で」「家族で参加したい」「友人に誘われた」など参加のきっかけを語りながら、作家との会話がはずんでいました。

出来上がった瞬間、絵を受け取った参加者がとてもうれしそうなお顔になるのが、このアートイベントの醍醐味でもあります。鈴木さんの描いたどの作品も大変凝った描写でした。



これまでにない参加者の多さに、長い時間お待たせしてしまった方も、参加をお断りしてしまった参加ご希望の方も多く、大変恐縮しております。
次の開催を希望される声もいただきました、今後検討いたします。

| 誉のくまもと展 | 09:13 PM | comments (x) | trackback (x) |

上通まちなかゼミナール(通称:上通まちゼミ)とは、上通商店街にあるお店の人が講師となって、専門店ならではの知識や情報・コツなどを教えてくれるというイベントです。
(詳しくはこちら→https://www.facebook.com/kuma.kamizemi/

5回目となる今回、現代美術館も初めてまちゼミの実施店舗として参加し、ただいま開催中の「誉のくまもと展」を企画担当学芸員の解説とともにじっくりと鑑賞する「ゆっくりギャラリーツアー」を開催しました。



普段、展覧会期中の日曜に行っているギャラリーツアーは30〜40分ほどなので「もっと作品の解説を詳しく聞きたかった!」というお声をいただくこともあるのですが、このゆっくりギャラリーツアーの開催時間はなんと1時間。

誉のくまもと展は、国内はもとより世界で活躍するすばらしいアーティストの方々にお願いして制作していただいた「コミッションワーク」を数多く展示していますが、いつものギャラリーツアーでは時間の都合上なかなかお話しすることができなかった作品制作の裏側や、作家さんとのエピソードがふんだんに盛り込まれた贅沢なツアーとなりました。





参加者のみなさんは学芸員の解説に深く頷きながら、ときにメモをとるなどしてとても熱心に聴いていらっしゃいました。
ご参加いただいたみなさま、ありがとうございました!

| 誉のくまもと展 | 10:00 AM | comments (x) | trackback (x) |

ご多忙のなか、錣山親方(元関脇寺尾)にご来館いただきました!
主な目的は、ただいま開催中の「誉のくまもと展」に出品されている、安本亀八《相撲生人形》(当館蔵)と、瀧下和之さんが、故九重親方(元横綱千代の富士)をオマージュして制作した《大相撲力士図−雲竜−》の観覧です。
当館としても、相撲界の方に、《相撲生人形》を見ていただくのは初めてのことであり、どのようなご感想がいただけるのか、楽しみにしていました。

本展入りまして、まず注目されたのが、寺田克也さんの作品。「同世代の方なんですね」と興味を持ったご様子でした。

続いて、《相撲生人形》を、全方向からぐるりと観覧。「筋肉がすごい表現ですね」
「上手投げですね、でも、腰に完全に乗っているから、腰投げかもしれない。親方の判断次第ですね」とのこと。
また、髪型を見て、「髷を結っていないですね。うちの力士たちも、風呂上りはこんな感じの髪型ですよ」とご指摘。着衣でもあり、いわゆる公式試合ではない雰囲気の演出か?と、作品理解が深まる重要な発言でした。
また、「目が血走っているのも、試合後にそうなっていたこともあります」というような
コメントも。
「土俵の上では、それまで汗をかいていても、すっと汗が引きました。自分のことですが…。」という、土俵という場の特別さを教えていただくような言葉もいただきました。



続いて、瀧下和之さんの作品を観覧。
千代の富士をオマージュした作品を見て、「もっと目つきが鋭い、こわい人でしたよ。引退後もこわい存在でした。自分が試合をしたなかで、最も強い力士でしたから…。」とのコメントでした。
対の作品《大相撲力士図−不知火−》を見て、「そうです、こんな感じの目つきで、にらみあう感じです」と勝負の場の雰囲気をお教えくださいました。



続いて、会場を観覧。
《市川三四助像》を見て、「もう少し目がたれてたら、自分の子供のころに似ているかも?」とチャーミングなコメントや、
石川直樹さんの《異人》をみて、3.11の時のご近所の被害の様子などをお話くださいました。
宮島達男さんの《Archive of Death Clock》については、この写真のなかに、熊本の方がたくさんいますとご紹介したところ「地震で被災された方が写っているんですね…」と真心からのコメントをいただきました。



現代美術や、生人形との出会いは初めての機会だったご様子でしたが、会場を存分に楽しんでいただけたようでした。
会場入口に、錣山親方のサイン色紙をご紹介しております。ぜひチェックしてくださいね!

| 誉のくまもと展 | 07:20 PM | comments (x) | trackback (x) |

展覧会企画学芸員の冨澤が、ただいま開催中の「誉のくまもと」展について講演しました。

展覧会の特徴として、
「開館15周年を記念する展覧会として、熊本市民がテーマや出品作品に親近感を感じるような内容」、
「現代美術館ならではの活動として、コミッションワークを作家に委嘱、初公開の新作として発表すること」、
「館蔵品の活用」を意識して準備を進めたこと、
テーマの選定として、
熊本内外に強い存在感を持つ熊本城や石牟礼道子さん、
県外に強い発信力を持つ生人形、
県内では著名だが県外にほとんど知られていない(ので発信したい)肥後六花などを選定し、この4つのテーマを、コミッションワークとして5人の作家(うち2名は熊本出身)に制作委嘱したことを紹介しながら、講演を開始しました。

講演では、コミッションワークに取り組んだ、石内都さんや寺田克也さん、石川直樹さんの取材風景、今田淳子さんの展示空間、瀧下和之さんの制作エピソードなどを紹介しました。

また継続する生人形研究の成果として、当館収蔵の《相撲生人形》については、歌舞伎役者の見得の表情との一致や、役者たちと生人形の知られざる関係の近さを出品作品を通じて紹介しました。
さらに、市民と行う文化財保存の観点から、出品作品の《馬人形》(宇賀神社蔵)の保全修復のアドバイスをきっかけに、町内・校区が協力して作品を修復した作品の背景などを紹介しました。

最後に、震災直後から展覧会を準備したことで、「災害」にひとりの人間としてどう向き合うか、というテーマで、宮島達男さん、石内都さん、秀島由己男さんの作品から「ひとりひとりの生の証」という観点で作品を読み解きしました。

講演後、たくさんの書き込みのあるアンケートを多数いただきました。
本当にありがとうございました。



| 誉のくまもと展 | 07:30 PM | comments (x) | trackback (x) |
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